Date
2020.03
Client
KIKI.Co.,
Shu Kojimaが、栃木県日光市の獣害に関するプロジェクト「NIKKO DEERSKIN」の動画制作を担当いたしました。
【Shu Kojima Comment】
獣害として駆除される鹿の皮の有効活用を目的に立ち上げられるプロジェクトムービー。
この数年の山暮らしから、単純に動物を「害」と形容することへの抵抗感、「そもそも人間都合の自然開発を進めてきた結果」「鹿などの野生動物たちはむしろ被害者なのでは」という視点を授かっていた僕は「魂込めて撮りきれるだろうか」と一瞬躊躇した。
しかし、「僕の目線でしか映せない現実があるはず」と喜んで引き受けることに決めた。
資料として渡された「日光山地の鹿狩りと狩猟文化」と題されたVHSは、敬愛する民族文化映像研究所のものだった。
今回のロケ地、日光・川俣の伝統的な山ノ神へ捧ぐ祭りから鹿狩りの様子が、今回の撮影対象者でもある猟師の小松さんの解説とともに記録映像化されていた。
まさか尊敬する日本のドキュメンタリー映画監督/映像民俗学者である姫田忠義氏と同じ立ち位置から、同じ対象にカメラを向ける機会がいま自分に回ってくるとは、この宇宙の計らいに胸が高鳴った。
そもそも日本は戦後復興のため成長の遅い(しかし野生動物の食料となる木ノ実が生る)広葉樹林を皆伐し、建材に適した(しかし木ノ実が生らない)針葉樹林へと国をあげて植えかえた歴史がある。
にも関わらず、国産材よりも安価な海外輸入材を消費する道を歩み続けてきた挙句、50年以上が経ち、切り刻を迎えた樹々たちは見向きもされぬまま倒木してゆく始末。
野生動物たちは、食料を求め人里に近づかざるを得なくなり、オオカミの絶滅や、温暖化による降雪量の減少など、鹿が自然淘汰されることない環境も拍車をかけ、その個体数は見る見るうちに増加し、農林業への被害の深刻化、自然の植生も大きく変化するまでに問題も肥大化した。
もはやこれは日光市の課題の枠を超え、国家レベルで取り組むべき課題となった。
人間は自分たちだけの利便性・発展のために、自然をコントロールし、支配しようとしてきた。
人間がこの自然界のもつ無限に複雑で、美しい営みの一部なんだという意識の目醒めを加速させたい。